第5回:ゆうたのぼやき「犬はおるけど退職金はないねん…」──中退共とiDeCoで“自営業の老後”をFP目線で設計する

家族会話編


──『犬はおるけど、退職金はないねん…』

あなたは「自営業だから退職金は諦めている…」と、将来のお金に不安を感じていませんか?

実は、退職金は会社からもらうものだけでなく、自分の働き方やライフプランに合わせて**『自分で設計する』**ことができます。

今回の記事は、個人事業主の兄・ゆうたとの会話を通して、50代からでも始められる代表的な老後資金の作り方、**『中退共』と『iDeCo』**の仕組みを分かりやすく解説します。


1. 犬はおるけど、退職金はないねん…

「俺のとこな、退職金はないねん…俺、自営業やし、老後どうなるんやろって最近ちょっと不安でな。」

ある夕方、兄弟3人が近所の焼き鳥屋で集まった。兄・ゆうたは、愛犬の写真を見せながらぼそっと言った。

「でも兄ちゃん、ちゃんと貯金してるんやろ?」

弟・こうたが串をつまみながら返す。

「そんなんあるかい。貯金なんて、運転資金で毎月消えてくわ。現場の材料費とか、急な修理とか、犬の病院代もあるしな…正直、老後のことまで頭が回らへんねん。

妹・ひまわりが笑いながら口を開く。

「兄ちゃん、それ、あるある。でも、自営業でも**『退職金制度』**を使って老後資金を作れるよ。代表的なのが『中退共』と『iDeCo』。どっちも制度としてちゃんとしてるから、どういうものか話すね。」


2. 中退共(中小企業退職金共済制度)の仕組み

「中退共」は、国が運営する中小企業向けの退職金制度。法人でも個人事業主でも、従業員を対象に退職金を積み立てることができます。

中退共(中小企業退職金共済制度)

項目制度の概要
加入対象者中小企業の従業員(法人・個人事業主問わず
掛金月額5,000円〜30,000円(事業主が負担)
給付の仕組み退職時に従業員本人へ直接支給(共済から)
税制掛金は法人の損金(経費)として扱える
加入条件従業員がいること(代表者のみの法人は原則対象外)

制度の詳細は、中退共公式サイト|制度概要をご確認ください。

「うちは夫婦で法人にする予定やけど、嫁も役員やし…それでも中退共って使えるん?」

「役員は原則対象外だけど、奥さんが**『従業員』**として雇用契約を結んでいれば加入できる場合もあるよ。役割分担を明確にして、法人設計をちゃんとすれば使える制度よ。」


3. iDeCo(個人型確定拠出年金)って?

「iDeCo」は、自分で積み立てて運用する年金制度。退職金というより**「自分年金」**に近いけど、老後資金としては非常に有効です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

項目制度の概要
加入対象者20歳以上60歳未満の国民年金加入者 (自営業・会社員・専業主婦など)
掛金月額5,000円〜68,000円 (職業によって上限あり)
給付の仕組み原則60歳以降に年金または一時金として受け取る
税制掛金は全額所得控除 運用益は非課税 受取時も控除あり
加入方法金融機関を通じて個人で申し込む (ネットで完結も可能)

詳しくは iDeCo公式サイト|制度概要をご確認ください

「で、こうたは会社員やけど、嫁はiDeCo入ってるん?」

「いや、うちの嫁は**『貯金は銀行派』**やからな。でも、子どもが生まれてから『教育費とか老後とか、ちゃんと考えなあかんな』って言うてる。最近、仕事が忙しすぎてなかなか考える余裕がないから、嫁も興味を持ち始めたみたいや。

「専業主婦でもiDeCoは入れるよ。月23,000円まで掛けられるし、税制メリットもある。家族で考えるのが大切よ。」


4. まとめ:退職金は、もらうものではなく『自分で創り出すもの』

中退共は法人・個人事業主でも使える退職金制度(従業員が対象)です。iDeCoは個人で積み立てる「自分年金」として、老後資金の柱になります。どちらも税制メリットが大きく、長期的な資産形成に有効です。

自営業は「制度に乗る」のではなく、「制度を選んで設計する」働き方です。家族の働き方や価値観に合わせて、退職金制度を活用することが重要です。

「あなたの老後資金は、誰が、どうやって作りますか?」この問いから、あなたと家族の未来を見据えたお金の設計を始めてみてはいかがでしょうか。


【大切なご案内】 この記事は、私自身の経験やFPとしての一般的な知識に基づき、お金や税金の仕組みを分かりやすく解説したものです。しかし、個別の状況によって最適な選択は異なりますし、税法は常に改正される可能性があります。最終的な税務判断は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。この記事はあくまで参考情報としてお役立ていただき、ご自身の判断と責任のもとでご利用ください。

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