第2回:こうたの疑問「年金って3階建てって聞いたけど、どういうこと?」──働き方で変わる“将来の保障”をFP目線で整理

家族会話編


「年金って、3階建てってどういう意味?」

「ひまわり、最近ネットで“年金は3階建て”って見たんやけど、俺、会社員やし厚生年金は入ってると思うけど、3階って何なん?」

弟・こうたが、スマホを見ながらそう切り出した。会社員として働く彼は、給与から天引きされる社会保険料の中身を気にし始めたようだ。

「うん、そうね。年金制度は“3階建て”って言われるけど、実はそれぞれの階層に意味があるの。働き方によって、どこまで加入できるかが違うから、まずは全体の構造から整理してみる?」


年金制度の3階建て構造とは?

「日本の公的年金制度は、基本的に3つの層で構成されてるの。1階が国民年金(基礎年金)、2階が厚生年金、3階が企業年金や個人年金。会社員は1階と2階に自動的に加入してるけど、3階は企業によって違うし、自分で積み立てるタイプもあるよ」

階層制度名主な対象月額の目安(2025年時点)
1階国民年金(基礎年金)全員(20歳以上60歳未満)約56,000円(満額)
2階厚生年金会社員・法人役員平均140,000〜160,000円(報酬比例)
3階企業年金・iDeCoなど一部の会社員・自営業者金額は個人設計による

制度の構造は、日本年金機構|公的年金制度のしくみで確認できます。


「俺は国民年金だけやから、1階しかないってことか」

兄・ゆうたが、缶コーヒーを片手にぼそっと言う。

「俺は個人事業やから、国民年金だけや。つまり、1階しかないってことか?」

「そうなの。個人事業主は第1号被保険者だから、国民年金のみ。だから、将来の年金額は満額でも月6~7万円前後。2階や3階がない分、自分で備える必要があるの」

「そら不安になるわな…」


「法人にしたら、2階に入れるん?」

「じゃあ、俺が法人にして、報酬をもらうようになったら、厚生年金に入れるってこと?」

「そう。法人の代表者でも、報酬を受け取っていれば厚生年金と健康保険に加入する義務があるの。つまり、2階に乗れるってことだね」

「なるほど…働き方で階層が変わるってことか」

「そう。会社員は“制度に乗る”働き方だけど、法人化すると“制度を選ぶ”働き方になる。その分、設計の自由度も広がるよ」


「3階って、自分で積み立てるやつもあるん?」

「3階って、企業年金だけやと思ってたけど、自営業でも入れるん?」

「あるよ。例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)は自営業者でも加入できる。これは“自分年金”って呼ばれるくらい、自分で積み立てて運用する制度。税制優遇もあるし、老後資金の柱になるよ」

詳しくは、iDeCo公式サイト|制度概要をご参照ください。


「こうたは3階まであるってことか」

「こうたは会社員やから、企業年金とかあるん?」

「うちの会社は確定拠出年金(DC)っていう制度があるから、3階部分もあるにはある。でも、運用は自己責任やし、積み立て額も会社によって違うから、あんまり過信はできへんかも」

「なるほどな…3階は“ある人もいる”って感じか」

「そう。だから、3階部分は“自分で作る”って考えた方がいいかもね」


「年金って、いつからもらえるん?」

「年金って、いつからもらえるん?」

「原則は65歳から。ただし、加入期間が10年以上必要。繰り上げ受給や繰り下げ受給もできるけど、金額が変わるから慎重に判断する必要があるね」

「65歳か…まだ先やけど、今から考えとかなあかんな」

「そう。年金は“もらう制度”じゃなくて、“積み立てて育てる制度”って考えると、今の働き方が将来にどうつながるかが見えてくるよ」


まとめ:年金制度は“3階建て”。働き方で階層が変わる

  • 日本の年金制度は「国民年金+厚生年金+企業年金・iDeCo」の3階建て構造
  • 個人事業主は1階のみ、法人役員や会社員は2階に加入できる
  • 3階部分は企業年金や個人型年金(iDeCo)など、自分で設計する領域
  • 法人化すると社会保険の加入義務が発生し、2階の保障が得られる
  • 将来の年金額は働き方と報酬設計によって変わるため、制度理解が重要