──「マイクロ法人、って何なん?」
最近、SNSや知人から「マイクロ法人を作れば得だよ!」という話を聞くことが増えていませんか?実は、「マイクロ法人」という言葉は、法律上の正式な制度名ではありません。
今回の記事は、FP1級・宅建士の私、ひまわりが、兄・ゆうたとの会話を通して、その真実と、混同されやすい「資産管理会社」との違いを分かりやすく解説します。
1. この前、知り合いが“マイクロ法人”作ったって言うててな
週末の午後、兄弟3人がまたひまわりの家に集まった。前回の扶養の話をきっかけに、兄・ゆうたは知人との会話で新たな疑問を持ったようだ。
「ひまわり、この前、塗装仲間の知り合いが“マイクロ法人”作ったって言うててな。『社会保険が有利になる』とか『節税になる』とか言うてたけど、そんな制度ほんまにあるん?」
「うん、それね。実は『マイクロ法人』っていう制度は、法律上は存在しないの。あくまでネットや実務で使われてる**『俗称』**であって、制度名ではないの。」
「制度としては存在しないってこと?」
弟・こうたがスマホを見ながら口を挟む。
「じゃあ、マイクロ法人って、制度としては存在しないってこと?」
「そう。法務局で登記する法人は、株式会社・合同会社・一般社団法人など、法律で定められた形しかない。『マイクロ法人』っていうのは、少人数で運営する小規模法人を指す呼び方で、制度的な定義はないの。」
「なるほどな…言葉だけが一人歩きしてる感じか。」
「そう。だから、『マイクロ法人』って聞いたときは、『何を目的に法人化するのか』を考えることが大事なの。」
2. 資産管理会社っていうのも聞いたことあるけど、違うん?
ゆうたが続けて聞く。
「じゃあ、資産管理会社っていうのも聞いたことあるけど、マイクロ法人と何が違うん?」
「資産管理会社は、**『法人の目的』**が資産の保有・運用にある会社のこと。例えば、不動産や有価証券を法人名義で持って、管理・収益化するために設立される。これも制度名ではなく、実務上の呼び方よ。」
マイクロ法人と資産管理会社を比較
| 項目 | マイクロ法人 | 資産管理会社 |
| 法的定義 | なし(俗称) | なし(目的による分類) |
| 主な目的 | 社会保険加入・報酬設計 | 資産の保有・運用・相続対策 |
| 活用例 | 役員報酬を低く設定して社会保険料を抑える | 不動産を法人名義で管理・収益化 |
| 設立・運営上の注意点 | 社会保険の加入義務・税務判断が必要 | 税務・相続の専門的設計が必要 |
ポイント:どちらも法律上の制度名ではないため、「何のために作るか?」という目的から考えることが重要
法人の種類や設立手続きについては、法務省|合同会社の設立手続きについてをご参照ください。
「こうたは会社員やけど、資産管理会社って関係あるん?」
ひまわり「あるある、会社員でも資産管理会社を作る人はけっこういるよ。例えば、賃貸アパートとか駐車場とか、複数持ってる人が法人化して管理したり、将来的に子どもに資産を引き継ぐために法人を使うケースもあったり。ただ、税務や相続なんかで、かなり複雑なの。FPとしては、制度の仕組みだけ説明して、判断的なことは税理士とか専門家に相談してもらうの。」
「うちは子供もおるし、将来のこと考えたら、仕事で忙しいからこそ、将来の面倒な管理は法人でまとめておけたら楽かもしれんな。」
ひまわり「そうね。資産管理会社は『今の収益』よりも『将来の設計』に向いてる法人形態よ。」
3. SNSで見る“マイクロ法人=得”って、ほんまなん?
「あと、SNSとかでよくみるけど、**『マイクロ法人=得』って、ほんまなん?**俺、正直、細かいこと考えるのが苦手やから、そういう情報だけ見て『得ならやるか』って、安易に飛びつきそうになってまうねん。」
「一部の情報は正しいけど、誤解も多い。例えば、『法人にすれば社会保険料が安くなる』っていう話は、報酬を低く設定すれば保険料が下がるという仕組みを使ってる。でも、それにはリスクもあるし、税務判断が絡むから、制度の仕組みをきちんと理解して、わからないことは専門家に相談するのが安全よ。」
4. まとめ:“マイクロ法人”も“資産管理会社”も、大切なのは『目的』
「マイクロ法人」や「資産管理会社」は法律上の制度名ではなく、実務上の呼称です。
法人化の目的は、社会保険・報酬設計・資産管理・相続対策など多岐にわたります。
法人を設立すると、社会保険の加入義務や事務負担が発生します。SNSやネットの情報は一部正しいが、誤解も多いため注意が必要です。制度の仕組みを理解し、目的に合った法人設計を検討することが重要です。
SNSやネット上の「マイクロ法人」という言葉は、あくまで小規模な法人の俗称です。大切なのは、言葉に惑わされず、「なぜ、法人化するのか?」という設立の目的を明確にすることです。
『あなたの場合は、何のために法人を設立したいですか?』
この問いから、あなたにとって最適な選択肢が見つかるはずです。もし少しでも不安があれば、税理士や弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。
【大切なご案内】 この記事は、私自身の経験やFPとしての一般的な知識に基づき、お金や税金の仕組みを分かりやすく解説したものです。しかし、個別の状況によって最適な選択は異なりますし、税法は常に改正される可能性があります。最終的な税務判断は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。この記事はあくまで参考情報としてお役立ていただき、ご自身の判断と責任のもとでご利用ください。


