第3回:ゆうたの疑問「扶養って法人にしたら変わるん?」──家族の保障と制度の仕組みをFP目線で整理

家族会話編

──「うちの嫁、ネイルサロンやってるけど、扶養って関係あるん?」

この疑問、実は多くの人が抱えています。特に個人事業を営む配偶者がいる場合、「扶養制度ってどうなるんだろう?」と不安に感じているかもしれません。

50代からの人生設計において、夫婦の働き方と扶養、そして社会保険の関係は、家計だけでなく、将来の年金にも大きく影響する重要なテーマです。

今回の記事は、ネイリストの妻を持つ兄・ゆうたとの会話を通じて、複雑に思える扶養制度の仕組みを分かりやすくひも解いていきます。

1. うちの嫁、ネイルサロンやってるけど、扶養って関係あるん?

「ひまわり、ちょっと聞いてええか?うちの嫁、ネイリスト(個人事業)やんか、扶養って関係あるん?俺が法人にしたら、なんか変わるんか?」

兄・ゆうたが、夕食後のテーブルでふと口にした。奥さんはおしゃれで美人なネイリスト。個人事業としてサロンを運営しているが、保険料や年金の負担が気になっている様子。

「うん、そうね。扶養制度って、実は**『働き方』『保険の種類』**によって変わるの。法人化すると、社会保険の仕組みが変わるから、配偶者の扱いも変わる可能性があるよ」

弟・こうたが、話に加わる。

「うちは嫁が専業主婦やから、扶養に入ってるで。保険料も年金も払ってへんけど、将来は年金もらえるって聞いた」

「それは**『第3号被保険者』**っていう制度なの。会社員や法人役員が厚生年金に加入している場合、その配偶者が一定の条件を満たせば、保険料を払わずに国民年金に加入できる制度なの。」

被保険者の区分と扶養制度の関係

区分被保険者主な対象保険料負担配偶者を
扶養にできるか
第1号国民年金自営業・個人事業主全額自己負担できない
第2号厚生年金会社員・法人役員会社と本人が折半配偶者を第3号にできる
第3号国民年金第2号の配偶者(年収130万円未満)保険料不要本人が扶養対象

ポイント:個人事業主(第1号)には扶養制度がなく、会社員・法人役員(第2号)は配偶者を扶養にできる可能性がある

制度の詳細は、日本年金機構|公的年金制度の種類と加入する制度をご参照ください。


「法人にしたら、嫁を扶養にできるんか?」

「じゃあ、俺が法人にして厚生年金に入ったら、嫁を扶養にできる可能性あるんか?」

「あるけどね。奥さんが個人事業主として収入を得ている場合は、年収130万円未満で、かつ事業が継続的でない場合など、扶養に入る条件があるの。他にも細かい基準があるから注意が必要よ」

「うちは月によって売上に波があるし、130万超える月もあるかもしれん…。俺も全部自分でやってきたから、こういう細かいルール、正直考えるのがしんどいわ。

「そしたら、扶養に入れないかも。法人化するなら、奥さんの働き方や収入についても一緒に考えないとね。」


4. 扶養制度は、今後なくなるかもしれんって聞いたけど?

「姉ちゃん、この前テレビで、第3号被保険者って制度そのものが見直されるかもしれんって言うてたけど、ほんまなん?」

「うん、実はその議論、ここ数年ずっと続いてるの。第3号制度は**『保険料を払わずに保障を受けられる』**制度だから、公平性という観点から見直しの対象になってる。特に、最近、共働き世帯や非正規雇用が増えているから『専業主婦モデル』が現実に合わなくなってきてるの。」

(制度見直しの動向は、厚生労働省|社会保障制度改革の方向性で確認できます。)

「じゃあ、今は扶養に入れても、将来的には保険料が発生する可能性もあるってことか?俺の嫁もいつかまたフルで働くかもしれんし、ちゃんと知っといたほうがええな。

「そう。現時点では制度として残ってるけど、将来的に『第3号の保険料負担』や『制度の廃止』が検討される可能性大。今の制度に頼りすぎず、家族の保障設計を自分たちで考えておくことが大切よ。」


5. まとめ:扶養制度は『今』を理解し、『将来』に備える設計図

扶養制度は第2号被保険者(厚生年金加入者)の配偶者が対象です。第1号(自営業・個人事業主)には扶養制度がなく、保険料は全額自己負担です。法人化して厚生年金に加入すれば、配偶者を扶養に入れる可能性があります。第3号被保険者制度は将来的に見直される可能性があるため、過度な依存は避けるべきです。

扶養制度は、知れば家計の助けになりますが、将来的に見直される可能性があることを念頭に置くことが大切です。過度に依存するのではなく、夫婦で働き方や収入をどう設計していくかを考えることが重要です。

**『もし扶養制度がなくなったら、どうする?』**この問いから、あなたと家族にとって最適な働き方と保障について、話し合ってみてはいかがでしょうか。


【大切なご案内】 この記事は、私自身の経験やFPとしての一般的な知識に基づき、お金や税金の仕組みを分かりやすく解説したものです。しかし、個別の状況によって最適な選択は異なりますし、税法は常に改正される可能性があります。最終的な税務判断は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。この記事はあくまで参考情報としてお役立ていただき、ご自身の判断と責任のもとでご利用ください。


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