長生きリスクに備える3つの資産防衛策

相続・事業承継とお金

(FPが解説|資産寿命を延ばすための実践設計)


はじめに:90歳まで生きる時代、足りるお金、足りないお金

FPひまわりです。
「老後の備えは十分」と思っていても、寿命の延びとインフレが進む中では、計画の見直しが欠かせません。
厚生労働省の簡易生命表によると、2024年の女性の平均寿命は87歳を超え、男性も81歳を超えています。
つまり、90歳まで生きる前提でのライフプランを考える必要があります。。

この“長生きリスク”とは、老後が長くなることで、
・資産が想定より早く減る
・医療・介護費が増加する
・インフレで実質購買力が下がる
といった複合的なリスクが発生します。

ここではFP1級の観点から、資産寿命を延ばすための3つの防衛策を体系的に解説します。


資産の「使い方」を設計する:可視化とシミュレーションが基本

老後資金の不安の根本は、“漠然としていて、足りるのか足りないのか、はっきりとわからないところにあります。
だからこそ、まずは資産を「見える化」し、シミュレーションで寿命との整合性を確認することが大切です。

たとえば次のような前提を立てます。

  • 手持ち金融資産:2,000万円
  • 年金収入(月):20万円
  • 生活費(月):25万円
  • 運用利回り:年1.5%(インフレ率1.0%を控除後)
  • 取り崩し開始年齢:65歳

この場合、年間の不足額は約60万円。
単純計算で資産寿命は約33年ですが、実際は利回りや物価上昇を考慮すると85~88歳時点で資金が尽きる可能性が高い。
だからこそ、“定期的な見直し”が不可欠です。

FP実務では、**取り崩し率(withdrawal rate)**を3〜4%程度に抑えると、資産の長期持続性が高いとされています。
生活費に占める年金割合を増やす、もしくは支出をコントロールしてこの水準を維持できれば、長生きリスクを大幅に軽減できます。


「年金+α」の収入をつくる:インカム構造を設計する

資産を減らさないために最も有効なのが、定期的なインカム(収入)をつくることです。収入の入り口を増やします。

具体的には次のようなものがあります。。

収入源期待利回りリスク流動性
公的年金約2〜3%相当(物価連動)
国内配当株・ETF年3〜4%
REIT・不動産収入年4〜5%中高
マイクロ法人役員報酬年60〜120万円目安
副業(オンライン)不定

ここでのポイントは、“取り崩さずに暮らせる構造”を作ることです。
年金+投資配当+法人収入の合計が生活費を上回れば、資産は減らず、むしろ再投資で増えていきます。

また、法人を設立している場合は、役員報酬を年60万円程度に設定することで社会保険料負担を最小限に抑えつつ、事業経費で老後支出を圧縮する戦略も有効です。
(具体的な報酬設定は税理士への確認が必要)


固定費を見直す:「キャッシュフローの引き算」は最強の防衛策

FPの観点では、可処分所得の最大化こそが資産防衛の基盤です。使えるお金を多くしようということです。
固定費を削減することで、同じ収入でも“長く持つ”構造を作れます。

見直しの優先順位は以下の通りです。

  1. 通信費(格安SIM・不要オプション解約)
  2. 生命保険(過剰保障・貯蓄型の再評価)
  3. 住宅ローン(金利交渉・繰上返済シミュレーション)
  4. サブスク・車維持費(使用頻度の可視化)

特に保険は、老後に不要な保障を抱えたまま保険料を払い続けるケースが多いです。
「死亡保障→医療・介護・生活保障」へシフトし、保険を“守り”から“使えるものに変える発想が重要です。


まとめ:「長生きリスク」は設計でコントロールできる

長生きリスクとは、「お金が尽きること」ではなく、運用や取り崩しのルールを整えないことです。

次の3ステップを継続的に実践すれば、人生100年時代でも安心して暮らせます。

  1. 資産の使い道を具体的に数字で確認する。
  2. 年金だけに頼らない収入プランを作る。
  3. まず、固定費を見直して支出を整理する。

老後の安心は、“お金の多さ”ではなく“お金の流れの設計力”で決まります。
今日から1時間、自分のキャッシュフローを見直してみましょう。
それが、最初の資産防衛策です。


注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、最終的な判断は税理士・社労士などの専門家にご確認ください。


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